iPhoneのデータをiCloudにバックアップしようとして、「iCloudストレージに十分な空き領域がないため、このiPhoneのバックアップは作成できません」と表示され、バックアップを作成できないことがあります。 おもな原因として考えられるのは、iPhoneに保存されている写真や動画の存在。写真・動画ファイルは容量が大きくなりがちなので、無料で使える5GBのiCloudストレージをすぐに消費し尽くしてしまうからです。

「写真」で42.81GBを消費している たしかに、写真・動画を削除してしまえばiCloudバックアップを作成できるようになるかもしれません。しかし、機種変更の度に思い出が詰まった写真・動画を削除するのは嫌だというユーザーが大半でしょう。 そこで本記事では、写真・動画の新しいiPhoneへの引き継ぎとiCloudバックアップ作成を両立させる方法を解説します。

写真・動画が多くてもiCloudバックアップを作成できる2つの解決策

アップルはiPhoneのデータをバックアップする方法として、PCが保存先となる「iTunes/Finderバックアップ」とiCloudストレージが保存先となる「iCloudバックアップ」という2つの方法をユーザーに提供しています。 この点、PCは大容量のストレージを備えていることが多く、iPhoneをバックアップしてもストレージ容量が不足するケースは少ないでしょう。したがって、iTunes/Finderバックアップだと写真・動画の容量は大した問題になりません。 他方、iCloudバックアップでは事情が異なります。というのも、無料で使えるiCloudストレージ容量は5GBしかないないため、写真や動画の数がちょっと多いとストレージがいっぱいになってしまい、iCloudバックアップを作成できない事態に陥るからです。 PCを所有していないiPhoneユーザーにとっては、iPhoneの機種変更時に写真・動画データのバックアップと復元をいかにして実行するのかが問題となるわけです。それでは、iPhone内の写真・動画が多くてもiCloudバックアップを作成できるようにするには、どうしたらいいのでしょうか。 ここでは解決策として、次の2つの方法を提示します。

1:iCloudストレージの容量を追加で購入する

予算に余裕があれば、iCloudストレージを購入して増やすのが手っ取り早い解決策です。iPhoneのバックアップ・復元に頭を悩ませずに済みます。

月額料金を払えばiCloudストレージはアップグレードできる 50GB(月額130円)か200GB(月額400円)にアップグレードしておき、不要な写真・動画を適宜削除すれば、ほとんどのユーザーがiCloudバックアップを作成できるはずです。 アップルとしては、この手法を推奨しているようです。ストレージを増量するだけなので難しいことはありません。機種変更後に新しいiPhoneで写真・動画を復元するのも容易です。 容量はいつでもダウングレードできるので、端末が複数台あるなどで容量が不足気味の場合、2TB(月額1300円)へ一時的にアップグレードするという手もあります。 iCloudストレージをアップグレード・ダウングレードする方法は、下記記事を参照してください。

2:フォトライブラリ(写真アプリ)をiCloudバックアップの対象外とする

旧端末に保存してある写真・動画はそのまま旧端末内に保管しておけばよく、新端末にオリジナルのファイルを引き継がなくていいし、iCloudに保存しておく必要もない──。この場合、iCloudバックアップを作成できるようにするのは簡単です。

以下で説明する内容を試す前に、「iCloud写真」がオフになっていることを確かめてください。

iCloud写真のオン/オフは、「設定」アプリ→最上部の[(ユーザー名)]→[iCloud]→[写真]の「iCloud写真」で切り替えられます。 まず「設定」アプリを起動し、[(ユーザー名)]→[iCloud]とタップします。

続けて[ストレージを管理]→[バックアップ]と進みます。

「このiPhone」と表示されているiPhoneを選択し、「フォトライブラリ」をオフにします。確認を求められるので[オフにして削除]をタップしてください。 これで、写真アプリ(フォトライブラリ)はiCloudバックアップの対象から除外されます。以下のように、次回作成のバックアップサイズが写真アプリの分だけ削減されます。

左:フォトライブラリがバックアップ対象の場合、バックアップの次回作成時のサイズが「41.15 GB」になっている右:フォトライブラリをバックアップ対象から外した場合、バックアップの次回作成時のサイズが「68.8 MB」になっている フォトライブラリを除外しても、iCloudバックアップのためのiCloudストレージ容量がまだ不足するようであれば、その他の不要なアプリのデータもバックアップの対象から外しましょう。 ちなみに、App Storeからインストールしたアプリ本体やiTunes Storeから購入した音楽・映画・電子書籍などは元からバックアップ対象外であり、新端末で再ダウンロードされることとなります。 もっともこの手法だと、旧端末から新端末にiCloud経由で写真・動画を引き継ぐことができません。そこで便利なのが「Googleフォト」のような外部のクラウドサービスやiPhoneのデータ移行機能です。 外部のクラウドサービスを利用すれば、iCloudの容量を気にする必要がなくなります。また、iOS 12.4以降で使えるようになったデータ移行機能は、バックアップを取る必要さえありません。これらを活用すれば、iCloudを経由しなくても新端末にて写真・動画を無料で復元することができます。

「Googleフォト」にバックアップすれば、機種変更後の新iPhoneで写真・動画をほぼ復元できる

「Googleフォト」を使えば、iPhoneで撮影した写真・動画を容量無制限でGoogleのクラウドストレージに無料アップロードできます。 完全に無料で利用するためには圧縮による多少の品質低下を受け入れる必要がありますが、圧縮前後の違いがほとんど分からないレベルの品質を維持できるので、特段問題ありません(画質を最重要視するユーザーであれば、パソコンを所有しているはずなので、本稿の想定するユーザーに含まれません)。

Googleフォトがさらに便利なのは、バックアップしたiPhone内の写真・動画を一括削除してくれる機能が備わっている点。iPhoneに保存してある写真・動画のファイル数が多く、かつ、PCを使えない環境であると、写真・動画の大量に削除するのは骨の折れる作業であるところ、Googleフォトを使えばその手間を省けてしまうのです。 Google フォトに写真・動画をバックアップするのは非常に簡単です。 まず、これまで使っていたiPhoneに「Google フォト」アプリをインストールします。

左:Google フォトのログイン画面右:バックアップの設定で「高画質」を選ぶ あとは画面の指示に従って、Googleアカウントにログインします。 初期設定ではWi-Fi接続時のみにファイルをアップロードする設定になっているので、iPhoneはWi-Fiに接続しておきましょう。 Gmailアカウントを新しく作成する方法──複数アカウントでの追加ログインも解説 Googleアカウントにログインすると、写真・動画のバックアップが自動的に開始されます。バックアップに長時間を要するおそれがあるので、新iPhoneを入手する前までにバックアップ作業を済ませておいた方がよいでしょう。バックアップ作業はこれで完了です。

自動的にバックアップされる iCloudバックアップから復元した新しいiPhoneには「Google フォト」アプリが自動でインストールされます。Googleアカウントでログインすれば、旧端末に保存していた写真・動画をGoogle フォトで閲覧できるようになっているはずです。 なお、前述のとおり、完全にオリジナルのファイルを復元できるわけではありません。 また、バックアップした写真・動画はGoogle フォトのクラウドストレージに保管されており、iPhoneから閲覧しているのはモバイル向けに縮小されたキャッシュファイルです。Googleフォトに保管されている元ファイルを新しいiPhoneの端末ストレージ内に保存したければ、あらためてダウンロードする必要があります。

iPhoneの「データ移行機能」を使えば、バックアップなしで写真・動画を引き継げる

iOS 12.4以降のiPhoneであれば、バックアップがなくても旧端末から新端末へのデータ移行が可能になっています。いくつか事前の準備はあるものの、複雑な作業を必要としないので誰でも簡単にデータの移行ができます。 iCloudの追加容量の購入をしたくなかったり、外部ストレージを使うのが面倒だったりする人は、データ移行機能の利用をおすすめします。iPhone同士でデータ移行をする方法については、下記記事で詳細に解説しています。

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