「OK, Google」の音声認識による室温調節、クルマで帰宅中に到着時間を推定して自動的に冷暖房をオン、室内の火災を感知したら自動的にメッセージを送信……そのようなホームオートメーション化をGoogleが横断的に実現する日がやってくる。最初はサーモスタットと煙感知器を軸にして始まったこの可能性を秘めた試みは、いずれさまざまな家電、サービスと連動していくだろう。 というのも、Google傘下のNestが23日、開発者向けにAPIを提供する「Nest Developer Program」を正式に発表したからだ。Nestはホームオートメーションを推進するベンチャー企業で、サーモスタット(Nest Thermostat)と煙感知器(Nest Protect)を開発・販売、今年1月にGoogleによって32億ドルで買収された。

Nest Developer Programは、各企業にNestのAPIを開放するもの。ロンチ時に発表された提携企業にはメルセデス・ベンツやLogitech、家電・洗濯機のWhirlpoolのような大企業から、スマート電球のLIFXやリストバンド型デバイスのJawbone、WebサービスレシピのIFTTTのようなベンチャー企業まで、錚々たる顔ぶれが並んでいる。 開発者を巻き込んで、Nestを基軸としたスマートホームを実現する試みだと言える。キーワードは"works with nest"だ。

たとえば、メルセデス・ベンツ。クルマで帰宅途中に到着時間を予測し、自動的に家の中の冷暖房をオンにして適切な室温に調整する。帰宅時に「暑い」「寒い」といったことがなくなるということだ。ベンツの純正アプリ「Digital DriveStyle」を通してNestを扱えるようになる。 LIFXのスマート電球と連動させると、煙を探知すると電球を赤の点滅灯にしたり、旅行中の空き巣を防ぐために電球を自動的に点けたり消したりすることができる。 Jawboneのリストバンドとなら、ユーザーの好みの室温を学習し、起床時に快適な室温に自動調節しておける。 IFTTTと連動させれば、火災時に近隣の住民にテキストメッセージを送信したり、スマホの位置情報に応じて室温を自動調整したりすることも可能だ。すでにレシピを作成可能なので、IFTTTユーザーはチェックしてみるとよいだろう。

6月20日に発表されたNestによる監視カメラのDropcam買収も、このプログラムに組み込まれていくことは、まず間違いない。 6月25日から始まるGoogle I/Oを待ちきれずに発表された本プログラム。これが噂されるGoogleのスマートホーム構想の核となるものなのか、それともAppleのHomeKitのような別のAPIが発表されるのか。初日のキーノートでも触れられるかもしれないが、Googleとしては開発者たちに事前に予習しておいてほしいということなのだろうか。 Googleのスマートホーム構想が、家の中を牛耳る日がやってくるのか。また、Appleのスマートホーム構想、日本国内の住宅・家電業界内で数年来ホットワードとなっている「HEMS」(ホーム・エネルギー・マネージメント・システム)との絡みがどうなっていくのか。 フィーチャーフォンからスマートフォンに移行していく際、OSレイヤーをアメリカ陣営のGoogleとAppleに支配されたことで、海の向こう側がモバイル業界の主導権を完全に掌握してしまった経緯を思い起こすと、このままスマート家電、スマートホーム関連にも同様の事態が発生してしまうのかもしれない。そして、ユーザーが肌身離さず持ち歩いているモバイルデバイスをGoogleとAppleに抑えられてしまっている以上、その可能性は低くはないだろう。目の離せない状況が続きそうだ。