Kindleストアが40%のシェアを獲得
1月9日、インプレスR&Dが電子書籍ストアの利用率に関する調査結果を発表した。調査対象は電子出版産業関係者向けの専門誌「OnDeck weekly」の読者で、実施期間は2012年12月17日から12月20日。有効回答数は582件。 調査によると、「現在利用している」人が最も多かったのは「Kindleストア」で40.0%、そのあとに「紀伊國屋書店BookWebPlus」の13.4%、「Reader Store」の10.1%、「楽天kobo」の7.4%、「BookLive!」の6.7%と続いている。 この調査結果について、インプレスR&Dは、 との見解を示している。
Kindleストアが他ストアを圧倒
たしかに、「Kindleストア」が「OnDeck weekly」読者の中で40.0%のユーザを獲得した事実は重要だ。 しかし、今回の調査で注目しなければならない点は、他にもある。 それは、「現在、利用している」人の割合ではなく、その他の回答項目の割合だ。そのことが分かりやすいように、電子書籍ストアの利用経験者数および購入経験者数に関する表をOnDeck調査データに基いて作成した。 利用経験者数=「現在、利用している」+「過去に購入したことがある」+「試した程度」 購入経験者数=「現在、利用している」+「過去に購入したことがある」 利用経験者の購入経験率=購入経験者数/利用経験者数×100
国内ストアは試すことすらされてない現実
まず、注目したいのは、67.2%の読者が一度は「Kindleストア」の利用を試していることだ。この67.2%という利用経験者数は、2位「紀伊國屋書店BookWebPlus」の50.8%の約1.3倍であり、その他の電子書籍ストアの利用経験者数とは2倍程度の開きがある数字となっている。 このことは、調査対象が「OnDeck weekly」という電子出版産業関係者向けの専門誌の読者であることを考えると大きな意味を持つ。電子書籍に関する興味・関心が一般ユーザよりも相当高いことが想定されるユーザ層からの支持を集めているということになるからだ。このアーリーアダプター層を取り込むことが、プラットフォーム事業において非常に重要であることは言うまでもないだろう。 また、半ば予想されていたとはいえ、この事実は国内電子書籍ストアに厳しい現実を突きつけたと言ってよい。他ストアはアーリーアダプター層に「試すことすらされていない」という現状が、「Kindleストア」との対比で炙りだされてしまった格好になるからだ。「試すことすらされていない」という現実が、電子書籍ストアに共通の課題であるとは言いづらくなってしまったわけだ。
Kindleストアでなら電子書籍を買うのか
さらに、強烈なデータは「購入経験者数」と「利用経験者の購入経験率」だろう。 調査対象ユーザの49.0%が「Kindleストア」で購入経験を有している。これは、他ストアの購入経験者数の2倍以上の購入経験者数だ。 また、利用経験者に限定して購入経験率を算出すると、「Kindleストア」利用経験者中の72.9%が「Kindleストア」で実際に電子書籍を購入している。
補足
ここで、1つ注意しておきたいのは、「Kindleストア」の「現在、利用している」の40.0%という数値についてだ。「Kindleストア」を現在利用している人が40.0%という高い数値を示したのは10月末に「Kindleストア」がスタートしたからである、とも考えられるためだ。つまり、最近利用し始めたのだから「現在、利用している」人の割合が不当に高めになってしまう可能性があるということだ。 しかし、2012年9月の前回調査における「楽天kobo」のデータを参照すると、40.0%という高い割合が出たのは必ずしも調査時期のためだとは言えないだろうことがわかる。9月調査時点の「楽天kobo」は、今回調査時点の「Kindleストア」と同様にサービス開始から2ヶ月弱経過していた。そして、9月調査時点で「楽天kobo」は「現在、利用している」人の割合が8.6%であり、今回の調査では7.4%と1.2%減に留まっている。この「楽天kobo」の経緯とかけ離れた変化が「Kindleストア」に起こるとは考えにくい。仮に「Kindleストア」が「楽天kobo」と同様の減少率で現在の利用者を減らしたとしても、30%台をキープできる計算になる。 ※そもそも、回答項目が曖昧なものであるために、このような検討を行う必要があるのだが、ここでは詳細に立ち入らないこととする。