アメリカ・ニューヨーク市がテストしているこの交通調査システムは、街中の歩行者やクルマの数を計測しデータ化するもの。ニューヨーク市と提携しているスタートアップ企業のPlacemeterが、市の監視カメラ映像を解析している。

リアルタイムに"場所の状況を測る"ことが目標

PlacemeterのCEOであるAlexandre Winterは、自社の目標を次のように語っている。 Placemeterという名前のとおり、場所の状況を測ることを目指しているのだ。 現在、運用している監視カメラは500台程度だが、じきに2,000台から3,000台程度まで増加させる予定だという。

今のところは、データの静的なスナップショットを取得しており、データ解析の解像度も粗い。だが、Placemeterは、番地レベルの解像度でリアルタイムにデータを提供することを目論んでいる。 そうすることで、ニューヨーク市主要地区のとある番地の店舗にどれくらいの人数が出入りしているのかといった情報を、リアルタイムで把握することが可能となるだろう。

上の画像では、店舗名や歩行者の数、クルマの大まかな車種まで認識していることが分かる。

混雑状況を事前に把握

Placemeterは、具体的に何の役に立つのか?分かりやすい事例をひとつ挙げてみよう。 たとえば、NYのブロードウェイでショーを観劇するために、チケットを購入する場合を想定してみる。まだ寒い3月に、安売りチケットを入手するために長蛇の列に並ばないといけないとしたら、できるだけ列が短い時に並びたいものだ。 もし、家に居ながらにして、現在の列の並び具合や今後の状況予測ができたらどうだろう?嬉しいに決まっている。Placemeterは、そんな願いを叶えてくれるかもしれない。

専用アプリを通して、行き先の混み具合や、時間帯による混雑度を過去と現在だけでなく、未来予測までしてくれる。 街中のあらゆる場所の混雑状況や道路渋滞をどこからでも把握したり、事前予測を知ったりすることができれば、市民の都市生活を便利にするだけではなく、ビジネスや行政に対して大きなインパクトを与えることになるはず。まさに、スマートシティ時代の到来を実感させてくれるプロジェクトだ。

監視カメラは無数に存在する

また、今どきで面白い試みは、一般ユーザの所有するスマートフォンを監視カメラ代わりにしてしまおうというもの。家に置きっぱなしの旧型機種を窓際に設置し、常に屋外を撮影してもらうのだ。

その撮影データを提供してもらうことで、ユーザに収益を還元する仕組みを構築するつもりのようだ。 Placemeterは、プライバシー問題への配慮を保証している。「僕らの技術は、人々の顔を認識しないし、ビデオ映像を保存することもない」(Alexandre Winter)とのこと。 また、筆者の根拠薄弱な予想だが、このPlacemeterはそのうちGoogleに買収されるのではないだろうか。そのとき必要な情報を送ってくれるGoogle Nowや、推進中の自動車の自動運転化プロジェクト、車載Androidシステムなどと相性が良さそうな気がするし、何よりGoogleの「世界中の情報を整理する」というミッションに適合しているからだ。 それにしても、SF映画の世界がどんどん現実味を帯びてきているような気がする。Placemeterの動画を見て、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に登場する独裁者「ビッグ・ブラザー」を連想してしまうのは筆者だけだろうか。