Uber Japan執行役員日本代表の武藤友木子氏 2019年8月27日〜29日にかけて、東京ビッグサイトで「外食ビジネスウィーク」が開催。主に外食業界・宿泊業界に向けた日本最大の商談展示会で、会期中にはおよそ600社、5万人を超える人が訪れた。 今回は、同イベント内で行われたセミナー「Uber Eatsが考えるフードデリバリー テクノロジーが加速させる業界動向と成功のレシピ」の模様をお届けする。セミナーには、Uber Japan執行役員日本代表の武藤友木子氏が登壇。Uber Eatsの市場規模や、外食業界におけるフードデリバリーの動向、将来Uber Eatsのテクノロジーがどのように進歩していくかを語った。

Uberのマッチングテクノロジーを活かすUber Eats

ライドシェアサービス(日本ではおもにタクシー配車など)を手がけるUberは、オンラインフードデリバリーサービス「Uber Eats」を展開する。 スマホからUber Eatsに登録されているレストランの料理を注文すると、配達員が自宅まで届けてくれる仕組みで、日本では2016年9月に都内およそ150店舗のレストランが加盟してスタートした。その後、開始約1年で加盟店は約1000店舗に増加。現在では東京のほか、大阪や愛知、福岡など10都市以上でサービスを提供し、1万店以上が加盟している。

オンラインフードデリバリーサービスのUber Eats(アプリ) Uber Eatsが活用しているのは、Uberのサービスで培ってきたマッチングテクノロジーだ。 「日本ではまだなじみが薄いUberですが、海外に目を向けると2010年のサービス開始以降、世界6大陸、63カ国、700以上の都市でサービスを展開してきました。どこかに行きたい人と周辺を走っているUberの車を位置情報やマッチングして、より早く目的地まで届けるサービスです」 Uber Eatsの仕組みを実現する上でカギとなるのが、レストランで商品を受け取って注文者の自宅まで届けてくれる「配達パートナー」の存在だと武藤氏は語る。注文が入った瞬間に、レストランと注文者の自宅、街中に散らばっている配達パートナーを最適な形でマッチングすることにより、迅速な配送を実現する。注文が入ってから配達が完了するまでの平均時間は30分だという。

老舗の蕎麦屋がUber Eatsで出前を再開

Uber Eatsが提供するようなオンラインフードデリバリーサービスの恩恵を受けるのは、私たち消費者だけでなく、料理を提供するレストランも同様だ。外食産業は人材不足や土地・原材料の高騰などさまざまな課題に直面している。 「飲食業界では、およそ85%の飲食店が人材の獲得に苦労しているというアンケート結果もあります。原材料費も2015年と比較しておよそ20%増加しました。さらに、日本は消費税増税も控えています。金銭面というよりも、心理面で外食にどのようなインパクトがあるかは予測できません」 そこで、人や土地を増やすことなく売上を上げる手段として台頭しているのが、フードデリバリー市場だ。 武藤氏によると、2030年にはテクノロジーの進歩により世界のフードデリバリー市場が現在の10倍にあたる40兆円に達すると予測されているという。Uber Eatsが参画することで、レストランは配達の人員を採用しなくても、デリバリーサービスを提供することができるわけだ。加盟店の中には、配達員を手配できず泣く泣く出前をやめた老舗の蕎麦屋が、Uber Eatsの登場を機に再開したケースもあるという。

ジム代わりにUber Eatsで自転車をこぐ配達パートナー

Uber Eatsでは、スマホと自転車さえあれば、レストランの注文を自宅まで届ける配達パートナーとして登録し、好きなときに稼ぐことができる。武藤氏によると、リリース後の3年間で幅広い層の人が配達パートナーとして働くようになったという。 「配達パートナーには、一切シフトがありません。働きたいタイミングでアプリをオンにするだけで、デリバリーの仕事を受注することができます。疲れたなと思ったら、アプリをオフにすれば仕事は来ません。 このように完全フレキシブルな働き方は、多くの人にニーズがあると感じました。たとえば、子どもを保育園や習いごとに預けている間だけ働きたいお母さん。他にも、仕事終わりの会社員がスポーツジムへ行く代わりに自転車を漕いでお金を貰う例など、さまざまな人に働いてもらっています」(武藤氏)。 配達パートナーの中には、「シェアサイクル」を使って配達をしている人もいる。自分で自転車を購入する必要すらないわけだ。好きな場所で手軽に働くことができるUber Eatsのようなニーズは今後も増えていくだろう。

海外の動向、未来のフードデリバリーサービスとは

日本は世界に比べてフードデリバリーの規模がまだ小さい。たとえば、中国の「美団(メイタン)」というフードデリバリー企業は、1日に2000万件のデリバリー注文を捌いている。日本では、データを開示している中で最も規模が大きい企業でも7万件に留まるという。 「逆に言えば、日本にはまだ伸び代があるということで、今後もフードデリバリーの文化は拡大していくでしょう。日本のレストランやホテルといったホスピタリティ業界の変化は、ドイツと似たような動きをたどっています。ドイツではここ数年、Uber Eatsが登場したことで一気にフードデリバリーが浸透しました」

武藤氏は、これからもテクノロジーやビッグデータを活かして、Uber Eatsをきっかけにさまざまなシステムを提供していきたいと話す。たとえば、先に挙げたシェアサイクルや、レストランの評価システム、オンラインウォレットといった、フードデリバリーサービスに関連するサービスだ。 「将来的にはAIやビッグデータの力を活用して、レストランと利用者の双方により最適な提案ができるようになると思います。たとえば、雨の日や気温が低い日に注文されやすい料理がデータから分析できれば、仕入れの参考になり、廃棄する食材が減らせます。またレストランの利用者には、栄養バランスを考えたメニューや嗜好に合った食事の提案といったことも実現できるでしょう」(武藤氏) 将来はUber Eatsを含めたホスピタリティ業界全体のイノベーションにチャレンジしていきたいと話す武藤氏。フードデリバリーのサービスが拡大して利用のハードルが下がれば、忙しい人でも自宅で手軽にレストランの料理を楽しめる。 今回はフードデリバリーを検討している飲食店向けのセミナーだったが、Uber Eatsを通じてレストランを利用する私たちにとっても、今後の加盟店増加や利便性の向上を期待したくなるような内容だった。 構成・文:藤原達矢 編集:アプリオ編集部

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